友人が着ていたコートのシルエットがとても素敵だったので聞いたところ、「昨年の夫と子供達からのプレゼントなの。Velascaというミラノのブランドで、イタリア国内で作られた生地やニットの糸を使って靴、シャツ、ニット、重衣料、デニム、バッグ、ベルトなどなどの商品それぞれの分野において厳選されたイタリア中にいる職人達の手によって生まれた商品だけを取り扱っているから正真正銘の『メイドインイタリー』ブランドよ！」とのことだった。コートの裏地にはメッセージも入っていて、ディテールも洒落ている。

そういえば今年の1月にご紹介したBe.SistersのオーナーでありデザイナーのフランチェスカがVelascaのデザイナーでもあると言っていたことをうっすらと思い出した。Velascaは2人のミラネーゼ男性が2013年に起業し、マルケ州はイタリア最古の靴製造地区であるモンテグラナーロにいる熟練した靴職人達の手仕事によるメンズシューズをオンラインで販売することからスタートしたブランドだ。2年後にはイタリアで小さなお店や工房を意味する”Le Botteghe”と呼ばれる路面店をイタリア国内に次々とオープン。コロナによってオンラインショップが伸びた2021年にはVelasca Womenが誕生。レディースシューズに始まり、2022年秋冬にメンズ、2023年秋冬にはレディースのレディートゥーウェアコレクションを発表するまでに事業を拡大。現在は、パリ、ロンドン、ニューヨーク、ミュンヘンにもお店があるそうだ。

ファウンダーであるエンリコ・カザーティとヤコポ・セバスティオの起業当初の夢が、イタリアの”Saper fare”（鍛錬された技術をもって最高のものを作り出す能力があること）の美しさと独自性を世界中に広めることであり、その信念が曲げられることはない。オンラインショップ上でも、購入した商品のパッケージの中にもその商品の素材がどこの場所のもので、どこの職人がどのような技術を用いて作ったものなのか、はたまたお手入れの方法まで事細かに明記されている。

聞き慣れた”Made in Italy”ではなく、「職人技のタッチを添えたMade in Italy」。靴作りは100年以上の技術の歴史があるマルケ州、ニットにはトスカーナ州のウール、特にカシミヤに関しては原材料はピエモンテ州のビエッラ、ニット製造はエミリアロマーニャ州、パンツはカンパーニャ州のサレルノ、コットン地はベルガモ県のアルビーノのものをプーリア州でシャツとして製造されるという具合だ。そしてデニムはCandiani（2022年2月のfrom MILANOでご紹介）。イタリアの最高品質のものをお客様に届けたいという彼らの想いが伝わる。

Velascaのモットーは、A Story made to last （記憶に残るストーリー）。生地もデザインも流行を追わないクラシックなもの。お店も温かみを感じるイギリスのカントリースタイル。スポーティーラインは70年代スタイルを中心に。メンズラインでスタートしたブランドだけにクラシックでエレガントで、オフィスでも余暇でも場所を選ばないスタイルだ。また商品名にはシューズラインに関してはロンバルディア方言での職業の名称、レディートゥーウェアはイタリアの小さな村の名前を用いるところもディテールに遊び心のエッセンスをとりいれるブランドならでは。

Velascaという名前の由来を聞いたところ、ファウンダーの1人のお母様とランチを食べていた時にミラノにある象徴的なビル、Torre Velascaの話になり、「Velascaもいい名前じゃない？」ということで決まったそうだ。Torre Velasca のように縦に伸びるように事業が発展し、また横にも広がっていく様子がオンラインビジネスという現代特有の分野の広がりを感じさせると。別名サスペンダー塔と呼ばれているらしいのだが、サスペンダーは紳士のエレガンスの象徴だけにメンズシューズビジネスを展開からスタートしたブランドにはピッタリのネーミングだったというわけだ。個人的には、まだ日が浅いレディースのコレクションの今後の展開が楽しみだ。