イタリア人にとって、とても大切なナターレ（クリスマス）は、大家族全員で集うことは許されず、少人数の家族で過ごすこととなった2020年。そして引き続き自粛生活が続いて、皆静かに新しい年を迎えた。2020年は忘れて、新しい年2021年に期待する気持ちを持ちつつも明日はどうなるかということを考えると不安になるのが人間というもの。そんな中で自分に何ができるかと考えながら、今できることをする。不安な気持ちを持っていても現在の状況が変わるわけではないのであれば、日常の中で楽しいことを考え陽気にそして心軽やかにいた方がいいと言う生粋のミラネーゼがいる。昨年のfrom MILANOでも何度か名前が上がった、私の友人でもあるヴィオラ。彼女はいつもキラキラした笑顔で、楽しいものや面白いものを見つけると子供のように喜び、周りにまでワクワクするエネルギーを伝染させる。

「このご時世、笑ったり、夢見ることを忘れちゃだめよ〜！」と言う彼女は、遊び心溢れるジュエリーを生み出すデザイナー。

ブレラ美術アカデミーを卒業後、ニューヨークへ渡りそこで知り合った女性からMassimo De Carlo氏（from MILANO 2019年3月でご紹介したギャラリーのオーナー）を紹介され、ミラノにある彼のギャラリーで働き始めた。一人目の出産を機にギャラリーでの仕事を辞め、その後ジュエリーデザイナーLia di Gregorioのもとで、ジュエリー製作を学んだヴィオラ。ミラノからジェノヴァへ移り住んだ彼女は、2008年、Les Jeux Des Damesを立ち上げた。

ヴィオラとの出会いは、2014年。Appuntamento da Sophieというミラノのソルフェリーノ地区にあるアパートの一室にて、小さなブランドのクリエイター達が集って行う期間限定の販売会。私も彼女も共に販売に参加していた。初めて彼女を見た時、その神々しい笑顔と、なんだか懐かしい感じを覚えるオーラに近寄って話しかけると、彼女は、大の日本贔屓だというではないか。「初めて日本へ行って、日本人の礼儀正しいこと、そして何よりも”gentilezza” (親切さ）に感動したの。そこから”LA GENTILEZZA È RIVOLUZIONARIA”(優しさは革命的）というブレスレット（写真参照）が生まれたのよ。あと、日本のパッケージ包装も素晴らしいと思う。ダイアモンドを包装するかのごとく美しいパッケージ。ご縁あって私が作ったブローチが日本のデパートに並んだ時はとても興奮したわ！Viola Pisentiとしてまた私の商品を日本でも紹介できたら嬉しい！」と天真爛漫に言う。

2018年、自分自身を作品で表現していこうという決意のもと、ブランド名を自身の名前、Viola Pisentiに改名。彼女のクリエーションには、彼女自身が投影されていて、ポジティブで、明るくて、軽やかな気分になるメッセージが込められている。ジュエリー以外にも、TI AMO TANTO ( とっても愛してる）と書かれたガムテープ(写真: violapisenti.comより転載)や、Come on baby light my fireと書かれたマッチなどなど、手に取った瞬間思わず笑みがこぼれてしまうものばかり。

ウィットに富んだ彼女のジュエリーは、彼女持ち前のポジティブなパワーが宿っていて、身につけるだけで元気になる。

ミラノで生まれ、ミラノで育ち、私の街はミラノ！というヴィオラだが、人生のある時点でジェノヴァに住むことになり、ジェノヴァとミラノを行ったり来たりしている彼女。

晩夏のとある一日、ジェノヴァを案内してくれた。ジュエリーのようなお菓子を出す老舗のパティスリーに、中心地の歴史ある建築物巡り、港町ならではの船員さん御用達のボーダーシャツなどを取り扱うお店、イタリア国内外から人々が集まるというヴィンテージショップなどなど。普通なら見落としてしまうような小さなことを発見して喜ぶヴィオラ。彼女と出かけるといつも嬉しい驚きがある。彼女の自宅は、ジェノヴァの高台にあり、テラスからは地中海そして、ポルトフィーノの半島まで見渡すことができる。コロナ禍においてもミラノという都会の生活とジェノヴァで海の風を感じる生活を楽しむ。

ヴィオラの商品は、ミラノの名だたるおしゃれなブティックで取り扱われているのだが、ミラノのみならず、イタリア国内のステキなお店に並んでいる。コロナ禍で、ブティックがロックダウンで一時的に閉鎖せざるを得ない状況となり、自身のオンラインショップを瞬く間に完成させ昨年の11月オープンさせた。昔の貴族が着ていたようなブラウスや女神のようなドレスをおしゃれに着こなしたりする彼女は、所作も優雅でありつつ、行動力も早い。インスタでの商品の見せ方もとても独特で、商品を全面的に出した写真のみならず、その商品に込められたメッセージを連想させるようなこれまたウィットに富んだ写真や動画をアップしながら商品のリンクを貼っている。オンラインショップで売られている商品は、世界各国からオーダーが可能だそうだ。

生粋のミラネーゼであるヴィオラに彼女の愛するホームタウン、ミラノのお気に入りの場所を聞いてみた。「何と言ってもFioraio Bianchiはオススメ。特にアペリティーボが最高で、一人でふらっと立ち寄っても行くと必ず知り合いに会うし、ここで働いているフランス人のレネがとても好きなの。彼はとてもシンパティコ（同じ気質でウマが合う人）。マンダリンオリエンタルホテルの中でのアペリティーボもいいわ。モーダの街ミラノでのお気に入りのブティックは、Chicchi Ginepri。特にVia Maninにあるブティックは中にお庭もあってとても魅力的。5 vie地区にあるフレンチテイスト洋服を取り扱うCarla Saibene。そして、Mariza Tassyね。今は、残念ながらアペリティーボもできないし、レストランも閉まっているけれど、ミラノのオススメレストランは、Ristorante da Giacomo。Bistorot Giacomoも雰囲気がいいし、昔から安心のクオリティ。日本食を食べるならTokuyoshiがオススメ。私は旅をするのが大好き。コロナで色々なところへ行けないのはとても残念だけれど、ミラノは街の全てが好き。」彼女が好きなことやものについて話すときは、とても大袈裟なくらいに、大好きで大好きでたまらない！ということがカラダ全体から感じられるので、聞いているこちらもとても惹きこまれる。不安定な世の中、ヴィオラのように軽やかに生きることで、世の中を違う視点で見ることができ、ささやかなことも楽しめるようになるような気がする。