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May. 2023
ミラノのビッグイベント、ミラノデザインウィークが先月後半に開催された。今年は2019年以降4年ぶりの4月の開催。ミラノは誰もが知る工業デザインの街。先月初頭、復活祭のお休みでソレントを訪れたのだが、隣接するサンタニェッロにて生粋のミラネーゼであり、建築家、インダストリアルデザイナーの巨匠ジオ・ポンティが設計、デザインしたホテル、パルコデイプリンチピ(王子達の領地という意)に滞在した。埋め込まれて断崖の一部のように建てられたこのホテルは、まさにデザインホテルのパイオニアだ。工業デザイン好き、60年代好き、そして大のブルー好きの私は、タイルや家具はもちろんのこと階段やバルコニーの手すり、エレベーター、窓から見える格子の意匠、そして宿泊客専用のナポリ湾に突き出たプライベートビーチなどなど随所にジオ・ポンティのセンスを感じテンションがあがって大興奮。
Chikako Gowa(Instagram / chikakogowa)
通訳/クリエイター
大学在学中NYへ交換留学期間、フェアチャイルドパブリケーション広告部にて インターンシップ、パーソンズスクールにてファッション分析について学ぶ。 卒業後、某仏外資系企業に就職。結婚を機にイタリアへ移住。アパレル業界の通訳、2012年よりsen (www.sen-factory.it)のファウンダー兼クリエイターとして活動。彩り豊かな毎日を楽しむ三人の女の子のママ。
部屋の鏡付きテーブル、ヴァニティにはもちろんジオ・ポンティの代表作である椅子スーペルレッジェーラ。全てがブルー。そして部屋の窓からは空と海のブルーが果てしなく広がる。
「ソレントのホテルを作ったとき、必要性はなかったのだが、100室ある客室をそれぞれ違う床にしたいと思った。これは、わたしの陶器への愛情からくるもので、それが生かされると分かると頼まれたこと以上のことをしなければと背中を押されるのだ。」とはジオ・ポンティの言葉。33種類のタイルをデザインしたが、そのうち5つは作られず、5種類はホールやレストランなどの公共スペースに使用され、残りの23種類が客室に使われている。タイルの模様に合わせてそれぞれの部屋の壁画とクッションの模様も異なる。彼のこだわりある斬新なデザインは、時代を越えて今でも充分新しく実にオシャレだ。
ブルーバーという名のバーカウンター、壁の装飾タイル、郵便受け… ディテール全てにワクワクする。ホテルのロビーエリアには小さなジオ・ポンティミュージアムコーナーもある。たとえデザインに興味が無く、ジオ・ポンティが誰だか知らずにこのホテルに泊まったとしても彼のことについてそして彼の偉業、センスについて知ることができる。また、ホテルでは、ジオ・ポンティのことだけではなく、ホテルができる前のパルコデイプリンチピの歴史(これがまたとても興味深い)や世界各地から集められた植物が生息するジャングルのような庭園についてのガイドツアーをしてくれるので、このツアーに参加することをオススメする。
ジオ・ポンティは、植物が生い茂ったグリーンの空間を通って、海のブルーの中に入っていくような感覚を訪れた人々が味わえるようにとデザインしたという。1962年オープン当時はレストランに現存するテラス部分がなかった為、海までの距離も近く感じられ、ホテルのエントランスを入った途端に眼中に入ってくる海のブルーがより大きかったそうだ。計算されていて実に調和のとれた自然美を感じる。「タイルに描かれているモチーフは、この庭園に生息している植物の葉っぱに似たものもあって、そこからインスピレーションを得たのではないかと私達は思っているの。」とガイドしてくれたウクライナ人のズヴィットラーナ。
庭に生息する植物の中には絶滅の危機に瀕する種もあるそうだ。現在27000平方メートルに及ぶ1800年代から存在するこの植物園さながらの庭園は、ミラノのランドスケープアーキテクトがサスティナビリティの観点を踏まえて整備監修を行い、その美しい姿を維持している。
もともとイエズス会の所有の土地だったところ、19世紀にブルボン王朝の手に渡り、シラクーサ伯爵の別荘が建てられた。長いので割愛するが、放蕩生活を送っていたシラクーサ伯爵の苦しくも一途なラブストーリーの舞台となった後、1885年にロシアの富豪が所有し、コルチャコフ荘と呼ばれるようになった。そしてナポリの資産家の手に渡り、1962年、コルチャコフ荘の隣にジオ・ポンティによる設計の現ホテル誕生。この場所で起こっためくるめく歴史を聞き、当時の情景を想像しながら歩くとふとここで過ごした昔の人達に出会うのではないかという不思議な気分にさえなる。コルチャコフ荘の隣には、ジオ・ポンティのデザインによるプール(夏季のみ営業)があるのだが、これまたなんともユニークな造形をしている。水が張られたこのプールは通常の水色ではなくグリーンに見えるそうなのだが、それは本来人工的なものであるプールを木々の合間で湖に入っているかのように錯覚させ、プールをも自然な姿にしたかったようだ。
敷地から臨むヴェズヴィオ火山の姿がまた美しい。近代建築遺産と自然美の両方が堪能できる場所。今回は復活祭の時期だったということもあり、ソレントの街を黒装束の人々が十字架にかけられたイエスキリストを担いで練り歩くプロチェッシオーネという行列も見ることができた。ここへ滞在しながらソレントやポジターノ、アマルフィの風光明媚な景色を見ながらの観光ももちろんいいけれど、駆け足で観光をしてホテルでの滞在時間が短いというのはここでは実に勿体無いだろう。どこにいても美を感じる敷地内を散歩したり、同じ海に同じ山が見えるはずなのに毎日異なる姿をぼーっと眺めたりする時間は、私達を心身共にリラックスさせてくれる。次回は海水浴とプールを楽しめる夏に再び訪れ、まさにヴァカンス、自分自身を空っぽにする時間をゆったりと過ごしたい。
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