コロナ禍において、様々な業界が大打撃を受けているが、ホテル業界もその一つ。イタリアのファブリファミリー所有のスターホテルチェーンは、イタリア国内外にある３０軒のホテルのうち現在営業しているのはなんと１１軒のみとのことだ。厳しいロックダウンの中、ビジネスや病院関連の仕事でミラノに滞在する人々の為にオープンしているE.c.ho. Milano (E.c.ho. = Ecological contemporary hotelの略) のマネージャー、Marco Pratolongo氏にお話を伺った。E.c.ho. Milanoは、元々同じ場所に存在していたスターホテル　スプレンディドが10年前にエコフレンドリーホテルとして生まれ変わった。ミラノの玄関口である中央駅に隣接していて、ジュニアスイートにあるテラスからは、中央駅の素晴らしいイタリア建築やミラノのスカイラインを望むことができる。すべての部屋は、「グリーンルーム」モデル基準に沿って作られ、絨毯、壁紙そして室内装飾品は、すべてエコ認定されたもの。ロビーや客室の床は、フローリングのように見えるリサイクルされた磁器石器で、ベッドは、リサイクル素材と木で出来ている。リネン類は、もちろん天然繊維。(写真はInstagram @starhotelsechoより転載)

ホテル内に一歩足を踏み入れると、シックなレセプションに迎えられ、自然光が降り注ぐ共用スペースへ。(写真はInstagram @starhotelsechoより転載)大きなガラス張りのこのオープンプランエリアからは、ホテルに隣接している15世紀後半にさかのぼる、ブラマンテ様式の柱廊のある小さな礼拝堂が見え、夏にはロビー、ラウンジエリア、バーとベランダが繋がり、とても開放的な空間を生まれ、駅付近の喧騒が嘘のように感じる。チェックインの際には、グリーンルームの特徴が書かれたルームキーを受け取り、ウェブサイトにアクセスすることで、滞在中のカーボンフットプリント（CO2の排出量）を計算し、削減するための戦略を算出することができるそうだ。名前の如く環境に優しいホテルE.c.ho. Milanoは、自動システムにより制御される空調設備や、使用済みの石鹸水はトイレの水や植物への灌漑水として再利用していたり、低消費水蛇口の使用などなど、環境に配慮した特徴のリストは素晴らしく、2012年には、European Hotel Design Awardを受賞、そして2019年には、Green Globe Gold Statusという国際認定を獲得している。様々な取り組みの結果、年間130トンのCO2と25％の水が削減されることに加えて、天然ガスが25％、電力が15％節約されているそうだ。

ロビーの壁にはモダンタペストリーの如くオープンスペース全体に沿って豊かな庭園の光景が広がる。バックライト付きのリサイクルされた100％生分解性のPVCパネルによって、屋内にいながら「外にいる」ような感覚を味わえる。これはレストランルームまで続き、レストランでは庭の写真が実り多い菜園の画像に変わり、「グリーンフード＆ムードガーデン」というレストラン名とグリーン哲学にリンクしているのだそうだ。「レストランで提供される食事の素材は、旬のもの、オーガニックのもの、ミラノ近郊の農家直結の生鮮食材などより良いものを滞在客の方達にと日々絶え間ないリサーチ、研究を重ねています。コロナ禍の現在は、朝食をレストランで摂ることも可能ですが、ビュッフェに並んでいるものは、すべて一つ一つ包装されているものを使わざるを得ませんが、温かいお料理に関しては、直接テーブルでサーブさせていただいています。」とマルコさん。

「一言でサスティナブルと言っても、高い志を持っていても完全なるサスティナビリティを目指すことは容易いことではないのです。我がホテルで行なっている取り組みのひとつに、FORESTAMIというものがあり、毎月ベストエンプロイーに苗木をプレゼントしています。この取り組みも環境と関連しているもので、一貫性と信頼性が大切だと思っている自身も大変気に入っている取り組みです。また、スターホテルチェーン全体としての取り組みとして、Plastic FREEが挙げられます。各部屋に置かれるアメニティは、使い切りのプラスチック容器のものは全て排除しました。」いかにグリーンの哲学に沿った活動が出来るかを熱心に探究していることが伝わってきて、とても素敵だと感じた。(写真はレストランの一部。Instagram @starhotelsechoより転載)

E.c.ho. MilanoはエコフレンドリーだけでなくV.I.K.(Very Important Kids)という名の取り組みをしているキッズフレンドリーホテルでもある。ファミリールームが用意され、16歳未満の子供達の宿泊料は無料。小さなお子様連れのママ達がミラノで出来ることなどのアドバイスが書かれたちょっとしたガイドや、子供達へのプレゼントも木でできた入れ物に入った色鉛筆などサスティナブルな配慮を感じる。写真は、共用スペースに飾られた絡み合った枝と植物素材だけで作られた芸術作品。廊下や共用スペースの照明（写真参照）は、ホテル屋上に設置されたソーラーパネルで得られた太陽光発電によるものだ。

エコフレンドリーなホテルはここ数年で増えてきている。E.c.ho. Milanoは、ミラノに最初に出来たエコロジカルホテルの一つだ。「今年で10年を迎えますが、今後も取り組むべきことは沢山あります。毎日少しずつでも何かを改善して、より環境に優しいホテルを目指すことで、地球に貢献していきたいと思います。」ととても真摯に語っていたマルコさん。コロナ禍で、営業の開閉を繰り返しており、昨年11月に営業を中止し、今年の2月に再開したとのこと。ミラノに住んでいるのでホテルを利用する必要性はないが、レストランやバー(写真はInstagram @starhotelsechoより転載)は宿泊客以外も利用可能だと言うことなので、ロックダウンが解除され、自由に食事やアペリティーボをすることが出来るようになった暁には訪れたいと思っている。そして、以前のようにミラノに沢山の観光客の方々が訪れる日が1日も早く戻ってくることを願ってやまない。