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April. 2019
毎年4月に開催されるミラノデザインウィーク。サローネという名前で世界中の人々に知られる世界最大級の家具及びインテリア、デザイン製品の見本市。ファッションでも有名なミラノだが、ミラノと言えばデザインの街。デザインウィークは、街をあげての壮大なイベントであり、ファッションウィークとは違い、その業界で働く人以外の人々も参加できる。中でも見本市会場での展示以外にフオリサローネと呼ばれるミラノ市内のあちこちで設置されるインスタレーション巡りは、デザインウィークの楽しみの一つだ。家具メーカーのみならず、ファッションブランドもまた参加している。 イタリアのファッションブランドがどのようにデザインウィークに参加しているかをご紹介したいと思う。写真は、アントニオ・マラスのコンセプトストア、Nonostantemarras。ミラノ市内の住宅街にあるなんの変哲も無いミラノの建物の一角が、マラスの手によって2012年に魅惑的な世界マラスワールドに変身した。 通常ショップとして機能しているこちらのスペースは、デザインウィーク中、インテリアに焦点を当てた展示を見ることができる他、期間限定のビストロがオープンし、食事をとることもできる。 入り口を入ると中庭があり、デザインウィークの開催期間がちょうど藤の花の満開時と重なると、一歩足を踏み入れた途端ふんわりと良い香りが漂い、ハッとさせられる。 マラスの魔法にかけられ、五感を通じて気分が高揚するのを感じるそんなスペースだ。
Chikako Gowa(Instagram / chikakogowa)
通訳/クリエイター
大学在学中NYへ交換留学期間、フェアチャイルドパブリケーション広告部にて インターンシップ、パーソンズスクールにてファッション分析について学ぶ。 卒業後、某仏外資系企業に就職。結婚を機にイタリアへ移住。アパレル業界の通訳、2012年よりsen (www.sen-factory.it)のファウンダー兼クリエイターとして活動。彩り豊かな毎日を楽しむ三人の女の子のママ。
イタリアを代表する歴史あるファッションブランドの一つであるフェンディ。もともと毛皮工房としてスタートしたフェンディのホームコレクションFENDI CASAは、1827年に立ち上げられたというからファッションブランドの中でもいちはやくインテリア業界の活動を始めたといえる。イタリアのファッションブランドでインテリアの部門にまで活動を広げているブランドは、今では数多く存在する。フオリサローネは、ミラノのあらゆるエリアごとにグループ化されており、中でも沢山の展示会場が集まるトルトーナ地区にショールームを構えるフェンディは、ショップではなく普段は一般の人々はアクセスできないショールームを解放し展示を行っている。今年のテーマは、BACK HOME。広い空間に70年代のローマの家を思いおこさせる家の内装をベッドルームとダイニングルームは無かったのだが、テラス、玄関、ウェイティングルーム、ドレッシングルーム、リビングルームと空間を区切って表現していた。写真は、玄関エリア。ブランドアイコンとしてFを組み合わせたダブルFズッカと並び知られている縦縞「ペカン」モチーフをふんだんに使ったデザインのアームチェアや、ソファ、キャビネ、絨毯。どの空間もブルーと淡いピンクの組み合わせやピンクと茶の組み合わせ、共にとても柔らかいトーンでエレガントな雰囲気。
トルトーナ地区と並んでフオリサローネの地区の中でも歴史の長いブレラ地区にファッション部門のショールームを構えるミッソーニ。デザインウィーク中のブレラ地区は、いつもに増して人通りが多く、活気づく。中でもいつでもここに来ればカラフルな色の配色も手伝って気分も明るくなるマジカルな場所。「ニットの魔術師」そして「色の魔術師」として名高いミッソーニならでは。ミッソーニのホームコレクションMISSONI HOMEは、ミッソーニ創業者であるミッソーニ夫妻が1997年にファッション部門から引退すると同時に妻であるロジータが指揮をとって立ち上げた。 デザインウィーク期間中、ファッション部門のSPAZIO MISSONIとMISSONI HOMEのショールームスペースにアクセス可能となる。SPASIO MISSONIでのインスタレーションは、アレッサンドラ・ロヴェーダというかぎ針編みアーティストによるHOME SWEET HOME。椅子、テーブル、ベッドなどの家具を始め、壁掛け時計、電話、掃除用具に至るまで全てが甘いキャンディーのように色とりどりの柔らかいクロシェ(かぎ針編み)で覆われており、ミッソーニのドレスやリネンと調和して、ミッソーニの世界観に更なるインパクトを与える。ダイニングテーブルには、クロシェでできた可愛いお寿司まで置かれていた。これだけの鮮やかな色に囲まれると子供も大人も心が躍る。毎年見学者達の顔に笑顔が絶えないそんな空間だ。
90年代に誕生したイタリアのラグジュアリーファッションブランドとしては歴史が浅いマルニ。 構築的なシルエットや独特のプリント使いが特徴のこのブランドも自社のショールームを公開して毎年見学者にちょっとした驚きを与えるインスタレーションが評判だ。デザインウィークに参加するほとんどのメーカーとは異なり、毎年期間半ばから展示をスタートさせるのだが、期間はじめから市内のショップ前の中庭には、一体どんな展示なのだろうかと公開が待ち遠しくてたまらないと感じさせるちょっとしたインスタレーションが。
個人的にも毎年楽しみにしているマルニの展示。ワクワクしてショールームを訪れると、ビニールの垂れ幕を開けて足を一歩踏み入れた瞬間、思わず「おお!」と声を漏らしてしまった、今年のインスタレーション、MARNI MOON WALK。 スモークがたかれ、宇宙飛行士のようなウェアに身を包んだスタッフが近未来の世界に案内をしてくれるような、まるでテーマパークにいるような錯覚に陥ってしまう参加型の展示。スペースのど真ん中に設置されたスモークと光で前に何があるか分からないスロープを歩いていくと、着いた先には、屋外プールにあるような滑り台が!もちろん子供だけではなく大人も滑ることが出来る。写真では全てを伝えられないのが残念だ。 マルニは、過去数年、写真のようなメタルの骨組みにPVC素材を編み込んだ作りになっている椅子などの家具及びオブジェを発表していて、南米コロンビア共和国の元囚人達の社会復帰を支援する目的で全て彼等によるハンドメイドものだ。展示スペースに置かれている椅子やオブジェは全て購入可能で、売り上げが小児脳腫瘍科のアソシエーションに寄付されるというチャリティプロジェクトをマルニは行っている。
最後は、デザインウィークに併せて同時期にオープンしたGUCCI DÉCORのテンポラリーストア。グッチのホームコレクションを取り扱う今年の6月までの期間限定ストアだ。椅子などの家具はもちろんのこと、花瓶やテーブルウェア、クッションそしてウォールペーパーに至るまで、お店というよりも美術館のようだ。フィレンツェにもGucci Gardenというグッチの博物館があるのだが、グッチというブランドの歴史を垣間見ることができて、こちらもオススメだ。昔は、デザインウィークといえばもっぱら家具メーカーが主に参加するイベントだったが、近年ファッションブランドの活動が目覚ましい。いつかfrom MILANOで取り上げたいと考えていたミラノ最大のお祭りだとも言えるデザインウィークの様子をファッションに焦点を当ててご紹介してみたが、いろいろな目線で楽しむことが出来るので、開催期間中にミラノを訪れる機会があればミラノの街の盛り上がりようを是非ご自身で体感していただきたい。
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