Casa degli Artistiは、「アーティスト達の家」というその名の通り、アーティストのためのレジデンス(レジデンスとは言っても宿泊施設ではなく、アーティスト達が活動することが可能な11のアトリエスペースがあることからレジデンスと呼ばれている)として、ビジュアル、パフォーミング、サウンド、デジタル、応用芸術、映画、写真、文学、思想などの分野のアーティストの活動を支援する、出会い、創造、内省の場として誕生。同時に、一般の人々に向けた展覧会、コンサート、パフォーマンス、トーク、ワークショップなどが開催される多機能ハイブリッドスペースだ。
遡ること1910年。Casa degli Artistiは当時ブレラ美術アカデミーという世界的にも有名な芸術大学があるブレラ地区にアトリエというスペースとして誕生した。その後70年代には才能あるブレラのアーティスト達によって使用され、経年劣化と共に放置され、2007年には閉鎖された。5つのアソシエーションに所属する異なる業界のプロ11人が共通のビジョンに基づいて、リソース、スキル そしてコネクションを織り交ぜようという意志を持って集まり、2019年にミラノ市が発表した建物管理に関する入札を経て、これら5つの非営利団体からなる一時的な目的を持った協会、ATSを設立。そして廃墟となっていた建物を見事修復し、2020年2月にオープン。
ところが直後にコロナが蔓延し、初年度はアトリエは閉ざされたまま、オンラインのみでの活動を行ったという。90年代からのCasa degli Artistiファウンダーメンバーの1人であるクリスチャン・ガンジターノ氏が、日本人である私を見るなり、「僕の専門分野は、アーバンアートと浮世絵を始めとする日本のポップアートなのです。みんな知らないけれどポップアートは徳川家康の時代に日本で生まれたんですよ。僕のセオリーでは北斎が初めてのポップアート作品で、アンディ・ウォーホールはヨーロッパからの影響を受けた作品だと言えるのです。昔の妻が日本人でね、10年間毎年1ヶ月は必ず日本で過ごしていたので、日本のことも詳しいのです。」と施設を案内しながら話を聞かせてくれた。