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July. 2025
Casa Verdi(カーザ ヴェルディ)は、オペラが好きな人であれば誰でも知っている、そうでなくともイタリア人であれば知らない人はいない、イタリアの偉大な音楽家の一人、ジュゼッペ・ヴェルディによって作られた音楽家や声楽家そして画家といった芸術家のためのCasa di riposo(=リタイアした高齢者向け施設)すなわち日本語で簡単に言うなら老人ホームだが、ここでの生活は、普通の老人ホームでの生活とは違う。ミラノの西エリアに位置するBuonarroti駅に古くからある施設だ。
Chikako Gowa(Instagram / chikakogowa)
通訳/クリエイター
大学在学中NYへ交換留学期間、フェアチャイルドパブリケーション広告部にて インターンシップ、パーソンズスクールにてファッション分析について学ぶ。 卒業後、某仏外資系企業に就職。結婚を機にイタリアへ移住。アパレル業界の通訳、2012年よりsen (www.sen-factory.it)のファウンダー兼クリエイターとして活動。彩り豊かな毎日を楽しむ三人の女の子のママ。
ここでは、毎週水曜の午後、無料のガイドツアーが行われているほか、さまざまなコンサートが開催されている。
コンサートは、居住者のみを対象としたプライベートなものと一般に公開されるものがある。毎年9月になると新しいカレンダーが始まり、ウェブサイトで日程を確認し、参加することができる。
ガイドのお話の中で興味深かったのは、このホームには高齢者の方が住んでいるだけでなく、コンセルヴァトリオ(音楽院)で勉強している学生のための宿泊施設もあり、それぞれが自分の部屋を持ち、ここで生活することができるということだった。 なにより素晴らしいのは、ヴェルディが、ホームに住む高齢者と学生たちが交流し、一緒に学ぶことで、学生たちは高齢者の良い刺激となり、高齢者にとっては、若者たちの役に立ち、自分の才能や技術を提供するチャンスになることを望んでいたということだ。
ヴェルディは、このホームを病んだ人たちが集う療養施設としてではなく、芸術家達が休息し、ゲスト全員を結びつける音楽に没頭することができる保養所としての機能を望んだ。竪琴型のドアハンドル、窓枠の上部にはピアノの鍵盤の模様、そして椅子の背もたれは弦楽器というようにホームの至るところに楽器の意匠が使われているのも洒落ている。
そしてヴェルディ自身がこのホームで余生を過ごすことはなく、敢えて自分の死後にオープンさせるように計画していたという。オープンしたのはヴェルディが亡くなった翌年の1902年。また財政面で困難な状態にあった1921年には、当時の館長がニューヨークのメトロポリタンオペラに手紙を書き、カンパをお願いしたところ、メトロポリタンでは直ちにオペラの公演を開催して寄付金を送金してくれたそうだ。
滞在しているゲストの中には日本人の音楽家の姿も。ホーム内には編み物や絵画のワークショップ、フラワーアレンジメントやコスチュームジュエリーのワークショップ、さらには定期刊行物『La voce』の編集などレクリエーション・ワークショップがあり、ボランティアに付き添われたゲストが創造性を発揮して手工芸品を作り、年に1度開催されるマーケットに出品して、第三国の子供たちの養子縁組のための資金を調達しているそうだ。観光スポットとして訪れる人は少ないと思うが、ミラノの有名な観光スポットに加えて訪れてみてはいかがだろうか。
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