1月のFrom MILANOでご紹介したSan Maurilio Calzatureがあるドゥオモより徒歩5分ほどのエリア、5 VIE地区。この辺りの小道には、おしゃれでステキな小さな店が沢山ある。The Cloister(クロイスター)も「人里離れた静かな場所」という意味を持つその名のごとく路地裏にあるヴィンテージ品を主に扱う店。写真の女性は、オーナーのダニエラ。幅広いジャンルのヴィンテージショップが沢山あるパリで、週末の蚤の市Marché Dauphineでは自分のショップスペースを抱えつつ、ウィークデーは市内のヴィンテージショップで働くという毎日ヴィンテージ品に囲まれて生活していた彼女が2017年にオープンした。

ジェノバ出身の彼女が、パリのようにミラノにもヴィンテージの魅力を浸透させたいという夢を胸に1年かけてミラノ中を歩き、理想の物件に出会った。ここはCasa dei Grifi(グリフォンの家)という名を持つ15世紀の建物の一角で、ミラノにおいてとても良い状態で現存するルネッサンススタイルの中庭の一つがあることで知られる。

「小さい頃から仕立て屋だった叔母のもとあらゆる布地や色とりどりの糸に囲まれて育った事、そしてお爺さんが所有していたボルサリーノの帽子で遊んだ事がヴィンテージの世界に魅了されたきっかけだったと思うわ。」と自分の過去を振り返って語ってくれた。

クロイスターでは、世界中から集まる20年代から80年代(場合によっては90年代の物もあり)のヴィンテージの洋服、特に有名ブランドよりも名前こそ知られていなくても良い素材で出来た洋服や小物を中心にデニムコットンやモレスキンのオーバーオール、フランスの鉄道工員などのワークウェアも豊富に取り扱っている。「ワークウェアはサイズの小さいものであれば、女性も着ることができるのでユニセックスよ。50年代の紳士物のスイムウェアなどは、実にしっかりした作りで、柄も素敵なものが多く、女性もショートパンツとして履けるわ。」とダニエラ。

メインはヴィンテージの洋服だが、ショップのフィロソフィーは、唯一無二、老舗そしてクラフトマンシップ。日本人の職人が皮の端切れを使って作ったデザイン性の高い縞模様のバッグ、Sima Sima。ミラノにある小さな出版社の紙にこだわり、古くからの出版法を用いて、それぞれに番号が入った限定版書籍。現在廃盤となり入手困難な本の数々。フランス在住のオーストラリア人によって生まれた5種類のみのユニセックスの香水。1780年創業のジェノバの老舗製菓店のキャンディーやボンボン。そしてジョ・ポンティがデザインしたという現在は廃盤となっている生地を使ってリノベートした椅子やテーブルといった家具など、それぞれが持つ素敵なストーリーを知れば知るほど誰かにプレゼントしたり家に持って帰りたいと思わせるもので溢れるクロイスター。

クロイスターはヴィンテージショップのカテゴリーに入ってはいるが、ショップとしての機能だけでは無く、イベントスペースとしての機能も果たしている。4月のサローネの期間にはフランス人アーティストによるファイアンスリーを展示販売したり、今月はミラノフォトウィークにあわせてMaurizio Carliniの写真作品が展示されている。頻繁に変わるディスプレイは、いつ訪れてもハッとさせられる。今後も様々なアーティストとコラボレーションをしてイベントを開催する予定とのこと。ヴィンテージに魅了されて店を訪れる大半は外国人のようだが、より多くのミラネーゼ達にも知ってもらいたい場所だ。