レオナルドダヴィンチの最後の晩餐の絵で有名なサンタマリアデッレグラツィエ教会にほど近い高級住宅街の一角にあるARIOSTO SOCIAL CLUB。オープンは2020年の11月ということなので、ミラノがセミロックダウン中にオープンした。「そう、コロナ禍にオープンするなんて勇気あるでしょ。(笑)もうすでにオープンに向けて準備を進めていたし、予定通りスタートさせたの。その後何度も営業停止などを繰り返しながら今に至るわ。」と語る施設内にあるショップで働くエレナ。
ARIOSTO SOCIAL CLUBは、ミラノに古くからあるpalazzo signorileと呼ばれる美しい歴史的建造物であるマンションが一泊から宿泊可能な20戸のサービスアパート、ジム、レストランそしてショップに生まれ変わった「ひとつの場所でスタイルとコンフォート全てを提供する」施設だ。ミラノには表通りからは分からないのだが、気持ちのよい光が差し込む写真のような中庭があり、ここでは併設レストランでの食事を楽しむことができる。
ARIOSTO SOCIAL CLUBのショップでは、サスティナビリティを重視しているだけあり、さすが商品のラインアップもサスティナブルなものが多い。見た目靴底もレザーと見まがうようなヴィーガンシューズと呼ばれるモカシン。レザーのような見た目に仕上がっているコルクでできたお財布、中身もパッケージもオーガニックな材料を使ったミラノブランド「エトロ」のファミリーによって生まれた香水などなど。その他女性に対する暴力反対を掲げたCerchi d’acquaやCAFという虐待を受けた子供達を守る団体といったさまざまな慈善団体とのコラボ商品もある。またイタリアの有名高級ブランドからミラノの牢獄にあまり生地が届き、それを使って囚人達が作成したバッグも。興味深いのは、取り扱い商品の多くは、メイドインイタリーであるということと、ARIOSTO SOCIAL CLUBのためにイタリアの女性達の手から生み出されたものだということだ。「パンデミックを経て、沢山の女性達がクリエイティブに目覚めて素晴らしいものを作っているの。私達は、女性達にもっとスペースを与えたいと常日頃から思っているのよ。」とエレナ。そしてミラノ市内の配達は、環境に配慮してもちろん自転車クーリエのみ。
施設内にあるビストロレストラン、Uovo di Seppia。ミシュラン二つ星を獲得したシチリア出身のPino Cuttaiaシェフによるプロデュース。故郷シチリアの料理をベースに北イタリアの食文化のマリアージュをお客様に楽しんでいただきたいとお魚中心のメニューではあるが、さまざまなお料理をいただくことができる。ランチ、ディナーのみならず朝食やアペリティーボを天気の良い日には中庭で楽しむこともできるそうだ。写真にある歯が広がった不思議なフォークのアートは、出身地シチリアを象徴しているとのこと。その昔、人々は貧しさ故に毎度三食の食事もままならなかった頃、特に南イタリアでは大皿に盛ったパスタが食卓の真ん中に置かれ、そこから大勢の家族が食べたそうなのだが、その時に急いで早く食べられる人だけがお腹を満たされるということになってしまう為、皆フォークの歯を広げて一度により多くのパスタをすくえるようにという背景があるのだそうだ。ミラネーゼ達にもまだあまり知られていないARIOSTO SOCIAL CLUB。イベントの開催など色々アイディアがあるようなので、今後の活動が楽しみだ。