渡伊して以来、有名ヘアサロンであるアルドコッポラなどなど数々の美容院を試し、美容院難民だった私が、当時ハイブランドショップで働いていた友人の髪型が素敵で、どこの美容院でカットしているの？と聞いたところ「アントニオのところよ。彼は、扱いにくい日本人の髪質を分かっていて、上手にまとまるカットをしてくれるの！」と教えてもらったのがBellifuori。今ではミラノに日本人の美容師さんもいるけれど私はミラノでは必ずアントニオにカットをお願いしている。

女性向け美容師、男性向け美容師のみならずエステティシャンとしての資格も持つアントニオ。さらに講師としての資格も持つ。美容師として働いて37年。1994年に独立して自身のお店を構えたそうだ。

Bellifuoriは、美容院のみならずエステサロンでもある。

独立してからもコンテストに参加したり、お店を閉めてはファッションショーのヘアスタイリストとしての仕事もしたと言う。

本当はアーティスティックに自分の創造性をふんだんに駆使できるオートクチュールのショーの仕事をしたかったそうだが、当時はオートクチュールといえばローマでの仕事が多く、ミラノで行われていたプレタポルテの仕事をしていたのだそうだ。「結局プレタポルテのショーでの髪型は奇を衒ったものではなく、ストレートヘアやポニーテールといったシンプルなスタイルが多くつまらなくて辞めたんだよ。お店での仕事の方が楽しくてね。」とアントニオ。

写真は雑誌に掲載されたアントニオによるヘアスタイリング。

美容院業界でのサスティナビリティについて聞いたところ、ヘナ以外はどうしても100%自然由来の染料は無いと言う。

しかしできる限りサスティナブルであろうとサロンで使用しているヘアケア製品は、メイドインイタリーのLDVTという自然由来、動物実験をしていないものだそうだ。最近では、イタリアの美容院のほとんどがサスティナブルなヘアケア製品を選んでいるのはもはや当たり前のことだと言う。

「他にサスティナブルな製品といえば、ロングヘアが絡まないようにするためのブラシも再利用可能な素材で出来たものがあるよ。」

ミラノの最近のヘアスタイルトレンドは？の質問には、「明るいカラーのグラデーション、ロングヘアで相変わらず緩やかなウェーブが人気だね。」一方20歳までのティーネージャーは断然ストレートロングヘア。最近は成熟した年配のシニョーラに限らずボリューミーなヘアスタイルを好む傾向にあると言う。

おかっぱスタイルも再び人気が出ているのだとか。

「あとヘアラミネーションという髪の外側に作用し、艶やかな髪質にする革新的なトリートメント法を利用する若者が多い。パーマは最近はほとんどのミラネーゼはしないよ。」

昔からあるイタリア人の習慣の一つに、毎週金曜日か土曜日に美容院に行って髪を洗ってもらいブローをしてもらうというものがある。そして自宅ではなるべく髪を洗わず髪を痛めず、綺麗にセットされた髪を週末から週半ばくらいまで保てるようにするのだとか。おばあちゃんや母親にそういう習慣があると必然的に娘達も美容院に必ず毎週一度の頻度で通うようになるのだそうだ。

店名Bellifuoriとは直訳すると外見が美しいことなのだが、「90年代のミラノにおいて、気まぐれで非常に外交的な人に対して、『Sei bello fuori』という言い回しが使われていてね。ロゴをデザインしてくれた友人のススメもあってお店をBellifuoriと呼ぶことにしたんだよ。」とアントニオ。働き者で、でも休みは思いきりエンジョイするバランスのとれた彼のところへ行くと、世界情勢から宇宙人のことまでいろんな話をするのだが、いつもハッピーな気分で軽やかにお店を出る自分がいる。