「Sciura(シューラ)」とは、一般的にイタリアの年配の女性のことを意味するが、とりわけミラノの中心街に住む年配の女性のことで、基本的に裕福で、上品な身なりをしており、そのぞんざいな振る舞いからすぐに見分けがつく。

言語的には、「Sciura」は「Sciur(シュール)」というロンバルディア方言で「ミスター」を意味する言葉の女性形である。言葉自体は、文字通りには「レディ」または「ミセス」と訳すことができるが、この言葉の実際の意味は、敬称としてではなく、普通名詞として使用される場合、ミラノという都市とその郊外において文脈の中で、より広い意味に発展してきた。

彼女達の典型的な美的特徴を客観的に定義してみると、「シューラ」はエレガントで洗練された自分なりのスタイルを持ちながら、独特の態度がある。年配で裕福で、時代を超越したハイ・ファッション・デザインの服を着るか、時代遅れの高価でファンシーな服を着ている。 「シューラ」はミラノの高級住宅街でよく見かけられ、常に美容院できっちりとセットされたヘアスタイルでしっかりとしたメイク、おおぶりのジュエリー、とにかく手抜きのない状態で通りを散歩したり、劇場に行ったり、ショッピングをしたり、単にスーパーで買い物したり、サンタンブルーズやコーヴァといった老舗カフェでエスプレッソを飲んだりしている。

「シューラ」の起源は、ミラノの古い貴族社会に根ざしており、「シューラ」の本質と上流階級の階層システムとの関連性は否定できない。 自身の社会的関係やアイデンティティを表示し、定義する方法としての消費は、消費文化論の重要なポイントであるようだ。 「シューラ」テイストが贅沢品の代名詞となったように、この特定のスタイルを見せることは、富と上流階級を誇示する行為となった。 自分の富を目に見える形で表現するために商品を使うというこの行為は、アメリカの社会学者ソーシュタイン・ヴェブレンが「目立つ消費」と呼んだものであり、「シューラ」的な生き方や、自分自身のパーソナル・ブランドを表現する方法として欠かせないものとなっている。

「シューラ」はファーコートのような高級品であったり、また珍しいもの、ユニークなものを好むようで、彼女達の着こなしは、ステータスを無言で、しかし効果的に伝える方法であり、高価格はすなわち高品質をも意味するが、昨今の「シューラスタイル」は必ずしも高級品だけを身につけているとは限らない。彼女達はいわゆるスノッブ効果で現代社会に影響を与え、「シューラスタイル」を熟成させている。クラシックなカットを復活させ、スノッブな魅力も取り入れて「シューラスタイル」に貢献しているハイエンドファッションブランドもあるようだ。

近年、インスタグラムのプロフィールSciuraglamを通じて、「シューラ」は広く一般に知られるようになった。 30万人以上のフォロワーを持つこのインスタグラム・アカウントは、年配のファッショニスタに捧げられたもので、瞬く間に現象化した。このアカウントは、ミラノの街で日常生活を送るシューラの瞬間を、リアルなストリート・スタイルで撮影している。ちなみにここでセレクトしている写真は全てSciuraglamより転載。

このインスタグラムのアカウントではユーモアと皮肉が存在する中、「Sciura」が崇拝され、アイコン化されることが強く暗示されている。 Sciuraglamのステレオタイプな投稿は、シャネルのスーツを着て食料品の買い物をしたり、エルメスのバーキンのバッグを片手に路面電車に乗ったりする女性の写真である。Sciuraglamで見られる写真は、インスタグラム・アカウントの所有者が撮影した写真であったり、高級ブランドとのコラボ投稿やSciura自身がページに掲載されることを光栄に思い、熱望して送ってきた写真らしい。掲載されているビデオを見ると「シューラ」達の独特な態度も垣間見ることができるので、是非チェックしてほしい。日本のご年配のご婦人方もスタイルのある方が増えてきているが、「シューラスタイル」を参考にしてみるのも面白いかもしれない。