ここはミラノの中心地、庭にフラミンゴがいることで有名なVilla Invernizziのご近所にあるPalazzo Berri Meregalli。この1913年に建てられたリバティスタイルの歴史的建造物の中にあるのが、colvilleのアトリエ兼オフィス。奇妙な外観はむき出しのレンガや石のアーチといったネオロマン的な要素とフレスコ画や彫刻された水玉模様ドットなどのフラワー的要素の装飾が大胆にミックスされて、実にオリジナリティに溢れている。「この建物に恋をしたの。」と語るcolvilleの二人。

colvilleとは、MARNI でレディースウェアのデザインディレクターを務めた Molly Molloy(モリー・モロイ) と UK 版「VOGUE」でファッション・ディレクターとして活躍した Lucinda Chambers(ルシンダ・チェンバース)が 2018 年に設立した新鋭デュオブランドだ。2人の出会いは、2004年。当時コンサルタントとしてMARNIのデザイナーを探していたルシンダがモリーに出会い、長きに渡ってMARNIで一緒に仕事をし、仕事を通じて様々な職人達とコラボレーションすることがとても楽しかった二人は、MARNIとの仕事を辞めた後、自分達が女性としてずっと着続けたいと思えるものを作りたい！という思いを抱いて、パートナーとして一緒に活動し続けることになった。モリーとは初対面なのにずっと前からお互いを知っていたかのようだったとルシンダは当時を振り返る。

モリーはミラノ、ルシンダはロンドンを拠点と離れて活動しているが、ともにコレクションを手がけている。それぞれのリサーチ情報を共有し、ディレクションを決め、モリーがデザイン画を起こす。そしてルシンダがスタイルをチェックするという具合に、それぞれの立ち位置で絶妙な共同作業を行なっている。初めて会った時にもう既にお互いを知っていたかのように感じたソウルメイトのようで本能的感覚を大切にする二人の間には、深い信頼関係がある。だからこそ常に一緒にいなくても、決断力の早い彼女達は、無駄に悩まず決断を下し、例え考えに相違が出たとしても相手への信頼が自身の概念を解放して、「やってみよう！」という勇気を与えてくれることでスムーズに物事を進めていけるのだ。

colville は、ポジティブに希望とエネルギーを持ちながら未来を見つめたいという想いから、世界中の職人達と様々なコラボレ ーションを行ってるという。特に2人が女性であるということもあって、

女性達の自立を助け、バックアップすることを大切に考えている。過去にもアパレルラインのみならずホームコレクションのデザインも手掛けてきた彼女達だが、先月開催されたサローネでは、初めて彼女達のアトリエスペースを一般に開放して、新たなホームコレクションを発表したのだが、そこで展示されたメタルワークスは、イタリアの女性のメタルワーカーとのコラボによって生まれたものだそうだ。

2人がデビュー当初から掲げてきた信条には、「コラボレーション」に加え「サスティナビリティ」がある。アフリカやコロンビアをはじめとする世界中の職人やアーティストとのコラボを通じて、コミュニティや文化遺産の保護、フェアトレード、アップサイクルなどにも継続的に取り組んでいる。

写真2、4、6枚目(写真は全てcolville 提供)はすべて今年のSSコレクションのルックだが、アップサイクルビンテージファブリックをフラワープリント利用したワンピースやスカートなどなど、どれもアップサイクリングが反映されたもの。

既存のモノを変換し、価値ある別の目的のために再利用するという作業が好きだという二人。服はもちろんのこと、生活に関わる全てにおいて無駄を作らず価値を生むことをとても大切にしている。「私達が考える服とは、トレンドではなく、人々が真の価値を感じることができる、そして永く着続けられるものなの。」とモリー。

「多くのデザイナーは、たった一人で多くのことを背負って、とても孤独だと思うけれど、私達はいつもお互いに勇気を与え合えるから孤独を感じることはないし、パートナーの存在によって縛られない視点で物事を見つめることができて世界を発見できる。」とルシンダ。

ファッションの新常識に挑戦し、深い信頼で結ばれた彼女達をこれからも応援したい。