先月ミラノで開催されたSupersalone(From MILANO 9月参照)期間中に、ミラノ市内の様々なエリアを歩き回り、今まで知らなかったお店などに出会ったのだが、今回は私の友人が発見して教えてくれた久々に心が躍った素敵な場所をご紹介。

5 VIEエリアにあるBDDW。タイラー・ヘイズというオレゴン出身のアメリカ人のアーティストでありデザイナーによるショップ兼ショールーム。

中の空間が少しだけガラス越しに見えるだけで、入り口が通りに面していないので、知る人ぞ知る場所だ。

タイラーは、自身が画家であると同時に家具デザイナーであり、エンジニアであり、発明家と際限無く実にマルチタスクな人物だ。このスペースには、不可能なことは無いと言わんばかり彼の世界が詰まっている。NYにはタイラー自身の絵画作品が展示されたギャラリーとショップがあり、フィラデルフィアにはスタジオとワークショップそして彼デザインによるアパレルブランドであるM.CROWという同名のショップもオレゴンに構える。オレゴンのショップでは、地元のサスティナブルな素材を使い自身のワークショップで手作りされた商品が並ぶ。

各部屋を覗くと、見ている自分自身の中に「お！」という驚きというか何か気持ちが高揚する感情が湧くのを感じる。陶器でできたタイルやランプには、BDDWのチームの手による絵付けが施されていて、陶器に関しては、全てワークショップがあるフィラデルフィアの庭にある土とオレゴンで取れた土を使って作られているそうだ。陶器のマグカップは、フィラデルフィアで取った土はツルツルの質感である一方、オレゴンのものはザラザラの質感。土を掘って篩にかけて、不純物を取り除く工程から丁寧に行われる為、一つ一つの作成にとても時間がかかっている。

ソファや椅子、テーブルと言った家具はもちろんのこと、照明器具そしてオリジナルなターンテーブルまで！タイラーが木材を好み、愛着のある木が必ずと言ってよいほど使われているのだが、木に加えて陶器が使われていたり、どれも複数の異なるマテリアルが使われていてコントラストがあるところも面白い。例えば写真のターンテーブルには、木、大理石、レザーそしてメタルが使われており、それぞれが調和して温かみを感じるものに仕上がっている。

M.CROWの洋服は、これまた一着一着が丁寧に手作りされているので、物によっては唯一無二で、ほとんどのアイテムは一つのサイズにつき2、3着しか作られていないと言う。また生地の染料には木の残留物が使われている。主にオサジオレンジが使われているほか、写真のジャンプスーツは、クルミで染められているのだそうだ。洋服のボタンにも木や陶器の素材が使われている。

BDDWで私の目が輝いた理由がもう一つ。それは店内にあるM.CROW RADIOというラジオスタジオがあることだ。

毎日、オンエア時にはM.CROWのウェブサイトより音楽を楽しむことができる。

実はこの記事を書きながらも聞いているのだが、選曲といい、ヴィニル独特の針がレコードを擦る音までよく聴こえて実に心地よいラジオ番組だ。

BDDWとはBury your Dead Down Windの略で、直訳すると「あなたの死んだ部分を風が吹く方向に葬りなさい」つまり「過去は忘れて流れに身を任せて前進せよ」と私は理解したのだが、私が体験したようにワクワクが沢山詰まったBDDWへ足を踏み入れたら過去をすっかり忘れてテンションが上がって生き生きとする自分を感じるはず。